厚生年金の損益分岐点

最近、年金の計算等について興味を持っているので、色々な Web サイトで調べてみた。
年金制度は建前は制度だが、ユーザーにとって見れば立派な金融商品 なので、ユーザーの立場としては、その損得計算をしておくのは当然のことである。


政府や高齢者などは、年金のことについて、「損得勘定で考えるべきものではない」、「労働者層が労働能力の無い高齢者を間接的に扶養するための所得の再分配制度」などと頻繁に主張するようだ。


しかし、実際に汗水流して働いて得られた所得の一部を削って年金として支払う先 (つまり金融商品の契約先) は政府であり、高齢者の方々ではない。年金という金融商品の資金運用の裁量権はすべて政府にあり、通常は支払う側の各個人の意思通りに資金が運用されることは保証されない。税金と同じである。


ユーザーから見ると、資本主義的には、年金という「金融商品」は、他の種類の投資や投機 (預金、株、パチンコ、競馬、外国為替など) と同様の「金融商品」であり、この金融商品の運営者 (政府) と契約し (実際には法律によって強制的に契約させられて)、若いうちにお金を投資して、年をとった後運が良ければ (長生きしたり、国力がより豊かになった場合など) 投資した金額よりたくさん見返りがあるが、それ以外の場合は損をしてしまうという、紛れもない賭博商品だと思う。


(加入者から見てみれば、自分が政府に支払った金が、高齢者の養育のために上手に運用されたとしても、その他の国力を豊かにするための政策のために上手く運用されたとしても、それによって出資者である加入者がより大きな利益を得ることができるのであれば運用形態はどちらでも良く、最大の関心事は、出資した分よりも多くの見返りを得ることができるかどうか、ということである。)


よく、報道などをそのまま鵜呑みにして、「年金を払っても元が取れるかどうか不安だ」などと不安がる人々を目にするが、たいていの人はニュースや評論などを読んで不安になっているだけで、自分で実際に計算したり、計算方法を調べようとしたりしないようである。これは、まるで株に投資する前に、実際にその株を購入した結果、どれくらいの見返りが期待できるかということを十分調べないのと同様であり、愚かなことである。自分もこれから年金をたくさん支払う側になる訳であるから、少し Web サイトや書店などで調べてみた。


色々な解説記事があったが、たとえば、


『厚生年金の損得勘定 若者のための年金講座 吉田社会保険労務士事務所』
http://www.h2.dion.ne.jp/~chimaki/ws/mailmag/n3421.htm


という Web サイトによると、平均的には、


65歳から年金をもらい始めて84歳4か月になるまで頑張って生きれば、元が取れる事になります。
 男性の65歳の平均余命(65歳の人が平均であと何年生きるのか)は18.0年なので、平均まで生きたとしても、男性の場合は何と元本割れしてしまう事になります。
(会社負担分の保険料を一切考慮せずに、本人負担分の保険料だけで損得を考えるなら、あらゆるケースで充分に元が取れます)

 実を言うと、厚生年金には所得再分配機能があり、単身者か妻帯者か、月収が多いか少ないかで、この損益分岐点が大きく動いてしまうのです。


となるらしい。


国は、よく「会社で年金に加入している人は、払った分のおおよそ 2 倍の金額を受け取れます」などとこの金融商品を宣伝しているらしいが、よく考えてみると、厚生年金では個人が払う年金額は半額負担 (会社が残りの半額を負担) である。これによって個人が支払った金額 (半額) のおおよそ 2 倍の金額程度を受け取れますと言っているのである。
年金のユーザー (会社員) が、自分が支払った保険料の 2 倍の金額を受け取れるというように単純に思い込んでくれるのを期待しての宣伝文句だと思うが、実際にはユーザーが支払っている分と同じ金額を会社負担で支払っている。 仮に年金制度が無い場合は、その金額を会社が個人に支払うこともできるはずだから、その分個人が受け取れる金額が少なくなっているということである。
つまり厚生年金は、「個人が支払った額のおおよそ2倍の金が返ってくる、政府が運営するお得な金融商品という建前で広報されているが、本当のところは、会社が気軽に「税金」を払ってくれるようにするためのうまいシステム なのかも知れない。


自分も現行の計算式を使って、厳密に計算してみて、どの程度の金額が、年金という名前を被った「隠された税金」として徴収されるのかを計算してみようと思う。