Admin 権限がなくても VPN サーバーをインストールする機能

会社の自分のパソコンを普段は一般ユーザーとして使用している場合は多いと思います。そのパソコンに、上記のような新機能を活用して「自宅から会社に VPN 接続したい」と思った場合、VPN Server をインストールする必要があります。しかし、SoftEther 1.0 や PacketiX VPN 2.0 / 3.0 ではインストール時に Administrators 権限のユーザーである必要がありました。


これでは、たとえば会社で使っている自分のパソコンの Admin ユーザーのパスワードを忘れてしまった場合に VPN サーバーのインストールを行うことができず不便です。VPN サーバーをインストールするためだけにパソコンを再インストールして管理者ユーザーのパスワードを再設定しなければならなくなります。


このような手間を避けるために、PacketiX VPN 4.0 ではインストール時に以下のように「ユーザーモード」を選択することができるようになりました。ユーザーモードを選択すれば、Admin 権限がないユーザーでもインストールが完了し、VPN サーバーはタスクトレイに常駐します。タスクトレイのアイコンが邪魔だと感じる場合は、希望により非表示にすることもできます。(非表示にするときには、本当に非表示にして良いかどうかの確認メッセージが表示されます。)
ユーザーモードVPN Sever プロセスはユーザー固有のスタートアップに登録されます。Windows にログオンしている間だけ動作します。ログオフすると動作は停止します。再度ログオンすると動作が再開します。実用上は、Windows にログオンしたまま、画面をロックして帰宅するのが良いと思います。



Admin 権限なしに VPN サーバーをインストールし常駐させることができる機能は、単に「Admin 権限のパスワードを忘れた場合に便利」というだけに留まりません。実は一般ユーザー権限で VPN サーバーを動すことができる本機能は、セキュリティを向上させることにつながるすばらしい機能なのです。一般的に、WindowsUNIX などの OS では、サーバープロセスを「root 権限」、「システム権限 (Admin 権限と等価)」で常駐させることはセキュリティ上あまり好ましくないと言われています。これは、万一プログラムにバグがあった場合は暴走してシステム全体を停止させてしまったり、脆弱性があった場合はシステム全体にわたって影響が生じたりするためです。もしプロセスを一般ユーザー権限で立ち上げておけば、たとえバグや脆弱性があった場合でもセキュリティ上の影響は最小限に留まります。
そのため、PacketiX VPN 4.0 が「ユーザーモードでのインストール・常駐」をサポートしたことは、単に便利だというだけではなく、セキュリティを向上させるために念のため一般ユーザー権限で常駐させたいという、セキュリティ意識の高い方の需要も満足することができる大変良い改良点だと思います。


なお、「ユーザーモードで動作している VPN Server の仮想 HUB 内の VPN クライアントが、社内の物理的な LAN 上のコンピュータとの間で通信ができるようにする」ことを実現するのには大変な苦労を要しました。こちら にあるような、「逆 TCP/IP プロトコルスタック」というようなものをソフトウェアで実装し、VPN Server 内に組み込んであります。この技術により、VPN Server プロセスは一般ユーザー権限のみで、VPN クライアントと物理的なコンピュータとの間で TCP/UDP/ICMP での通信を実現しています。