信用できない他人のシステム(クラウドサービス等)に計算処理を委託する

『機密データを安心してクラウドに預けられる暗号方式』
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0907/27/news03.html

面白いことを考え付いた人がいるようだ。

ジェントリー氏は、「完全準同型暗号(fully homomorphic encryption)」を実現する方法を考案した。この方法は、暗号を復号したり、その機密性を損なったりすることなく、暗号化されたデータに対する複雑な数学的演算を可能にする。ただし、この方法には難点もある。膨大なコンピューティングパワーが必要なことだ。場合によっては現在の1兆倍ものレベルが必要になると推計されている。


確かに、現在すでに実用化されている SETI@home のように計算資源として自宅等の PC の余っている CPU 時間を用いて分散計算する仕組みに、上記のような技術でかつ計算量があまり増えないものを組み合わせ、さらにネットワークも十分高速になれば、大変コストパフォーマンスの良い計算システムができるのだろう。
余っている一般家庭の電力をつけっ放しの PC の CPU 時間として企業の計算に利用するということもできるようになる (そういう方法をとったところでトータルの電気消費量は減らないのかも知れないが、ハードウェア投資が減るのだろう)。

6 年くらい前に見た TCP/IP の研究の記事

すでにタイトルを忘れてしまい、検索しても出てこなかったのだが、確か 2003 年頃に変な研究の論文があった気がする。
内容は、現代社会では事実上どの PC にも同一のチェックサムアルゴリズム (IP ヘッダの CRC のことか?) を有する TCP/IP スタックを有していることを利用して、他人の PC に何か複雑な計算をさせるという実験の話だった。
具体的には、TCP/IP パケットでチェックサム (16bit CRC) を誤ったパケットを相手に送信すると何も応答がなく、正しい CRC を持ったパケットを相手に送信すると必ず応答がある (例えば RST が返る) ことや、応答パケットも CRCチェックサムが付いていること、などを利用して、相手の PC の計算資源を無断で (PC 所有者に認識されることなく) 一部利用して目的の計算をすることができるかという実験だったと思う。
結果としては、確かに計算はできるが、そのために何万倍かの計算を自分のところで行わないといけないこと、および大量のネットワークトラフィックが生じること、などの欠点があるようだったが、コンセプトとして、第三者の PC がグローバル IP を持っていてインターネットにさえ接続されていれば、TCP/IP スタックが動いているだけで、その計算機の資源や電力を用いて小さな計算ができる、という点が大変面白いと思った。