SoftEther Alert & SoftEther Block 無償配布の意義

SoftEther VPN ソフトウェア本体が無償であるのと同様に、SoftEther Alert および SoftEther Block も無償で提供することにした。昨今のセキュリティ産業を見ていると、必ずしも顧客のためを想って行うセキュリティ対策事業の他に、残念なことにセキュリティをダシにして儲ける("セキュリティマフィア" などと言うらしい)ようなことを積極的にやっているような事業者も多い。
IT産業において、新製品・新技術の開発は前進的な産業であるが、セキュリティ産業はどちらかというと後退的な産業であると主張する人は結構いる。個人的には、セキュリティをダシにしてお金を儲けるよりも、個人や企業のユーザーにとって役に立つ新しい製品・技術を、できれば無償で提供して、付加サービス (特別な有益な機能を組み込んだバージョンなど) や導入サービスを有償で提供するようなビジネスを行いたいと考えている。
SoftEther の基本部分の開発は、IPA未踏ソフトウェア創造事業のプロジェクトとして、予算を頂いて行ったものであるので、その成果は無償で公開するのが理に適っていると考え、フリーウェアとして配布した。SoftEther Alert の開発は未踏ソフトウェアの開発期間が終了した後に、個人ではなく会社として行ったものであり、開発には相当のコストが発生しているが、上述のような理由でセキュリティ対策ソフトウェアを有償のみで販売するようなことはしたくないと考え、SoftEther と同様無償提供することにしたのである。
今回、SoftEther Alert を無償配布したことに対する、ここ1日程度のインターネット上での評価の大半は概ね肯定的であるようだ。仮に、SoftEther を無償で配布し、SoftEther Alert を有償で販売した場合には、上述のセキュリティをダシにして儲ける "セキュリティマフィア" と同様の行為を行ったとして批判されたであろう。また、配布元が同一であることから、マッチポンプであると批判されることになったかも知れない。
個人的には、今後も SoftEther Alert のようなセキュリティ関連のソフトウェア (VPN に関連する物も、しない物も含む) を開発した場合は (すでに複数の計画を練っている)、基本的にはすべて無償で提供していきたいと考えている。