「宇宙人からの攻撃を想定したマニュアル」を内閣官房と防衛省に開示請求したらこうなった

宇宙人からの連絡・攻撃があった場合の危機管理マニュアルは政府に存在しますか?

最近、『行政文書開示請求手続き』が大変面白く、これは AC な自分にとってはとても役に立つ制度だと気付いたので、色々な文書について『行政文書開示請求手続き』による請求をしています。


行政文書開示請求手続きでは、文書の概要を文字を記載することである程度特定することができれば、文書のタイトルや作成日などを知らなくても、「そのような文書が果たして行政機関に存在するかどうか」について各行政機関の情報公開担当者の方が調べてくれます。


たとえば、以下のような文書が日本国政府に存在するかどうかというのは、善良な国民であれば誰でも大変関心がある事項だと思います。

我が国に対し、将来において、万一、宇宙人 (地球以外の場所を生活の本拠とする人、または同等程度以上の能力を要する生物。) から電気通信その他の方法により連絡があった場合 (宇宙人からの連絡であることが確実でないものの、その疑いが強いものを含む。) または領域侵犯あるいは武力の行使等があった場合における対応方法を定める危機管理マニュアル等の文書。

このような文書が果たして政府に存在するか、あるいは存在しないか、というのは、問い合わせてみない限り分かりません。
問い合わせるために必要な作業は、具体的には、以下のような書式 (書式の Word ファイルは各官庁の Web サイトに置いてあります) に必要事項を記入し、1 件あたり 300 円の収入印紙を貼り付けて官庁に郵送するだけです。

各行政機関の Web サイトで下調べをした結果、上記のような「危機管理マニュアル」を整備する担当の行政機関の部署は「内閣官房 (危機管理センター)」と「防衛省」であると判断しました。そこで、各行政機関の Web サイトからそれぞれの役所の責任者の役職名と情報公開担当の住所を調べて、そこに郵送しました。

内閣官房 (危機管理センター) には宇宙人からの攻撃を想定した危機管理マニュアルは存在しない

行政文書開示請求を出してからしばらくすると、電話がかかってくることがあります。今回も、内閣官房の情報公開担当者の方から電話がありました。

電話の内容は以下のような感じです。

「えー、先日開示請求書をお送りいただきましたが、その中に書かれていた行政文書のですね、我が国に対し、万一、宇宙人 (プッ、という笑い声) からの連絡があったときの危機管理マニュアルというものが、私も本当にあるかも知れないなと思って、一応、内閣官房副長官に聞いてみたんですが、『無い。』と言われてしまいました。それで今回はどうもそのような文書は存在しないということですが、文書不存在による不開示通知をお送りしましょうか? それとも手数料の 300 円の収入印紙が勿体ないということでしたらキャンセルということで開示請求書をそのまま返送いたしますが?」

なお、行政文書開示請求に関して行政機関の担当者の側から請求者に対して電話連絡があることはよくありますが、毎回おおむね大変丁寧でわかりやすい対応であり、特にやっつけ仕事でやっているような感じがしたことはありません。色々聞くと、ある担当者は、1 日あたり数件、年間 1,000 件程度もの請求を処理しているそうです。ほとんどの役所では、専属で数名の情報公開担当者が割当てられているようです。

電話の後、しばらくすると、以下のような「行政文書不開示決定通知書」という紙が届きます。これには、電話で事前に連絡いただいたとおり、「当該行政文書を作成または取得しておらず、保有していないため。 (不存在)」として不開示とすると明記されています。

行政機関は、この「行政文書 (不) 開示決定通知書」に虚偽の内容を書くことはできませんので、必ず以下のいずれかの結果が記載されることになります。

  1. 全部開示
  2. 一部不開示 (一部に秘匿しなければならない情報がある)
  3. 全部不開示 (全部に秘匿しなければならない情報がある)
  4. 文書不存在 (そもそもそのような文書は作成・取得していない)
  5. 文書の存在・不存在すら非開示 (文書の存在・不存在を明らかにすると秘匿の意味がなくなる場合)


今回の場合は、上記の「4. 文書不存在 (そもそもそのような文書は作成・取得していない)」が回答されましたので、文書は存在していないということが判明しました。もし、「5. 文書の存在・不存在すら非開示」が回答された場合は、そもそもその文書が存在しているかしていないかという情報を秘密にすることを行政機関の長が決定したということになりますが、今回は 5 ではなく 4 ですので、本当にそのような文書は存在しないということで一応は結論付けることができます。

防衛省にも宇宙人からの攻撃を想定した危機管理マニュアルは存在しない

同様に防衛省に対しても同様の危機管理マニュアルの開示を請求しましたが、以下のような回答が帰ってきました。防衛省の場合は、電話連絡がなく、1 ヶ月弱で文書のみが突然郵送されてきました。

内閣官房と同様に、防衛省からも上記の「4. 文書不存在 (そもそもそのような文書は作成・取得していない)」が回答されましたので、少なくとも内閣官房防衛省の 2 つの行政機関には『宇宙人を想定した危機管理マニュアル』という類の文書は存在しないということがはっきり分かりました。


その他の行政機関に対しては、未だ同様の行政文書の開示請求は行っていません。そのため、他の官庁 (たとえば、警察庁?) には対宇宙人の危機管理マニュアルの類が存在する可能性は残されています。しかし、内閣官房防衛省のいずれにもないとなれば、他に存在する可能性はとても低いのではないかと思います。もしかすると、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 などにはそういったものがあるのかも知れません。独立行政法人も行政文書開示請求と同様の制度の対象となります。興味がある方は請求してみてください。


このように、行政文書開示請求の制度を利用すれば、国民は、ある特定の内容の目的・内容の文書が存在しているかしていないかを調査することができます。存在している場合は、原則として、その内容のコピーを受取ることができます (コピー代金、手数料、送料が別途かかります)。そして、受取った文書のコピーは、第三者に開示したり Web サイトで公開したりすることもできます。

AC な皆さんはどんどん行政文書開示請求をやりましょう

『行政機関の保有する情報の公開に関する法律』 を活用すれば、国民は行政機関の保有している行政文書を開示請求することができます。(開示請求にかかる手数料は前払いしなければならないので、無料でいくらでも開示請求できるという訳ではありません。)


行政機関は、開示請求があったときには、原則として 1 ヶ月以内に、文書の存在有無を確認し、存在する場合は全部開示するか、一部開示するか、全部不開示とするか、を選択して回答しなければならないことになっています (行政機関は、必ず回答をしなければならず、請求を放置することはできない)。


行政文書開示請求をするために、理由を明らかにする必要は全くありません。単に純粋な興味本位で、行政機関にどういう文書が存在しているのか知りたい、または文書の内容を見てみたい、と国民が考えるのであれば、それだけで開示請求をして差し支え無いのです。興味本位であっても、行政機関の内部的な活動内容について多数の国民が常に関心を持ち続けるのは、それはそれだけで国全体にとって有益なことであります。


行政文書開示請求の手続きは、郵便だけで素人でも簡単にできます。前払いする手数料は、郵便局やコンビニで購入できる収入印紙で支払うこともできますから、自宅や会社に居ながらにして手続きが可能です。このような便利な制度であるにもかかわらず、現在は、開示請求手続きの存在は新聞記者、ジャーナリスト、政治的活動家などの特別な人々にしか知られて折らず、国民の間には広く知られていないように思われます。

もとより日本人には行政機関というのは、お役所体質で面倒くさい手続きを要求してくる非生産的な組織だからどうしても必要な場合以外は積極的に関心を示さず、常日頃はできるだけ距離を置いておきたいという考え方が定着しているようです。このことが、一般人による興味本位での開示請求手続きがあまり盛んでないことの理由であると思われます。

せっかくこの便利な行政文書開示請求の仕組みがあるのですから、ぜひ AC な皆さんも、試しに 1 つや 2 つ思い付いた文書について開示請求してみてください。費用は 1 件につき 300 円かかりますが、コーヒー一杯分だと思えば、それほど高くないと思います。色々なことに関心を持つ AC な国民から、日々、多くの行政文書開示請求が行われれば、行政機関は自らの業務が常に AC な国民によって監視されているのだという意識を強く持つことになり、ひいては国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することにつながることになります。