道路交通法には、免停基準に達しても永久に運転できるセキュリティホールがあるのではないか?

私は運転免許証を持っており、また、自動車を運転する機会もあるので、安全運転のためにも、道路交通法について詳しくなろうと志し、この法律について熟読していました。
すると、すごく変な手順を踏んで道路交通法を以下のように活用することにより、何度も交通違反を重ねて免許停止処分や免許取消処分に該当するようになった運転者であっても、日本国内で適法にかつ永久に運転することができるのではないか、ということに気付きました。
道路交通法において、以下のような変なことができるようになってしまっていることは、交通違反を繰り返した運転者が、本来は免停や取消になるべきところ、工夫をすることにより免停や取消を免れることができてしまうことを意味します。
これは一種のセキュリティホールなのではないかと思い、将来このような工夫をしようとする人が増えることで交通違反の量が増え、日本の道路における危険が増大してしまうことを避けるために、セキュリティホールの修正が必要なのではないかと考え、この記事にまとめて blog に掲載しようと思いました。


11/28 この記事の最下部に「よくある質問と回答」を追加しました。
11/28 警察による捜査のための出頭要請、公安委員会による免許処分のための出頭要請の 2 つは、全く性質が異なるものですが、混乱する方もいらっしゃると思いますので、説明図を追加しました。


セキュリティホールについて示した図は、以下のとおりですが、詳しくは下記文章で説明します。



警告と免責: ここで記載する内容は個人的に研究をした結果に基づいているもので、有効性については一切保証されていません。ここで記載している内容を参考にしたことによって損害が発生しても、著者は一切責任を負いません。著者がここで記述している内容はあくまでも思考実験の過程によるものであり、運転者に対して法令違反行為をするように唆しているものではありません。ここに掲載した記事の趣旨は、論理的にはここに記載されているようなことが可能なのではないかという推論に基づくものであり、そしてそのようなことが可能であれば一種の不具合であると言うことができるので早急に不具合を修正しなければならないという問題提起を目的としたものであります。道路交通法以外の法令についても検証不足の点がある可能性があります。以下の行為を実際に実行することを勧めるものではありません。もし、実施される場合は、それぞれの行為が刑事罰の対象にならないかどうか十分注意してから、刑事罰の対象とならない行為のみを行ってください。

前提知識 その 1: 免許停止や免許取消とは

道路交通法によると、運転免許を持っている人が一定回数の違反行為 (または反則行為) を行い、点数が 6 点や 15 点などに達した場合、免許の発行者である公安委員会は、免許停止 (免停) や取消の行政処分を執行できます (第 103 条)。
ちなみに、「執行できます」という意味は、「絶対に行政処分をしなければならない」ということではなく、あくまでも公安委員会の裁量権の範囲内で、処分するべきだと考えた場合は処分することができる、という意味です。確かに違反行為であっても、悪質でなかったり、やむを得ない場合であったりすると公安委員会が考えた場合は、免停や取消の対象にならない場合もあります。


免許停止や免許取消は行政処分です。第 104 条の 3 に従い、公安委員会は、その行政処分の内容や理由を記載した書面 (通知書面) を運転者に対して交付しなければなりません。そして、通知書面の交付があった時から、運転者は運転をすることができなくなり、それ以降運転すると無免許運転罪になります。
したがって、仮に運転者が 6 点や 15 点などの違反点数に達した場合でも、公安委員会からの免許停止や免許取消の通知書面の交付が行われていない場合は、その人はその通知書面の交付が行われるまでの間は、自動車を運転することができます (無免許運転になりません)。
よく、交通違反をして 6 点や 15 点などの違反点数に達したら、取り締まりを受けたその瞬間から運転してはいけないと誤解している人がいますが、それは間違いです。前述のように、公安委員会は、運転者が基準点数に達した後、自由な裁量で、行政処分をするかしないかを決定することができます。また、決定には時間がかかります (数ヶ月程度)。その間は行政処分が行われるかどうかは運転者は知ることはできないので、行政処分が行われることを通知した書面の交付を受けない限りは、運転者は問題なく自動車を運転できます。


公安委員会からの免許停止や免許取消の通知書面の交付は、運転者が公安委員会に出頭した際に行います。具体的には、「違反点数が何点になったのであなたは免許停止対象者になったから、○月○日に公安委員会に出頭してください。」と書かれた案内状が郵送で届きます。その日に真面目に出頭すると、意見の聴取 (聴聞) の後に、処分の通知書が交付されます。処分の通知書が手渡された瞬間から、免許の効力が停止または取消されます。
ところが、公安委員会からの出頭要請に応じずに、出頭しないこともできます。出頭しないことによる罰則は一切無く、また、公安委員会への出頭は犯罪に関する捜査のためのものではないので、出頭しないからといって逮捕されるなどして強制的に出頭させられることもありません (公安委員会にそのような権限はありません)。出頭要請に応じない運転者の場合、警察官が出頭する日時を改めて指定した上で出頭を再度要請することができます (第 104 条の 3 第 2 項)。この場合も運転者はやはり出頭要請を無視することができます。運転者が出頭要請を無視し続けた場合は、公安委員会は、処分の通知書を交付することができないため、処分はいつまでたっても執行されないことになります。
(処分の通知は、運転者がその通知の内容を知ったときに、初めて効力が発生します。運転者が自分が免停または取消の処分をされたことを知らない間は、たとえ公安委員会として処分したつもりであっても、その処分の効力は発生しません (執務資料 道路交通法解説 14-2 改訂発行 P.651)。そのようにしなければ、運転者は自分に対してどのような処分が執行されているか知ることはできないため、車を運転して良いか否かがわからなくなってしまいます。そこで、処分の通知書は、運転者が出頭した際に、口頭で内容を説明し、さらに証拠の担保のため、立会人を 1 人設けて交付することになっています (執務資料 道路交通法解説)。処分の通知書本体を運転者の自宅に封書で郵送することはできません。郵送の場合は確かに処分の通知書の内容を運転者が知ったという証拠が取れないためです。内容証明郵便で送付しても、運転者が開封して内容を読んだという証拠が取れないため、実施されていません。なお、処分の通知書を交付いるから出頭しなさいという案内の手紙やハガキは自宅に郵送されます。)


そうすると、「それでは公安委員会への出頭要請に応じなければ、処分の通知書の交付を受けないのだから、ずっと自動車を運転できるのではないか ?」という疑問が自然に出てくることと思います。
これは一応はその通りで、朝日新聞 2006 年 11 月 27 日 の記事『免許取り消し、出頭拒めば「運転可能」 道交法に抜け穴』という記事でも指摘されています。
しかし、運転免許の有効期限は最長 5 年間であり、有効期限が切れるまでに更新をしなければなりません。更新のために公安委員会の窓口 (警察署) へ行くと、免許証を一旦預ける必要があります。その後、通常であれば更新済みの免許証が出てくるのですが、公安委員会への出頭要請に応じていなかった運転者の場合は、公安委員会はその際に行政処分をする機会があります。公安委員会は、免許証を更新する代わりに、処分通知書を交付することが可能です。そうすると、免許停止や取消処分がその時点から執行されてしまいます。もしこの場合に運転者が通知書の受領を拒んだ場合 (書類の内容を見ずに慌てて帰宅するなど) は、公安委員会は免許の更新をしないことができます (第 101 条第 5 項)。免許の更新ができなかった場合は、運転者は、現在の免許の有効期限が切れた時点で、運転をすることができなくなります (第 105 条)。
したがって、公安委員会から処分書を交付するための出頭通知があっても、それを無視し続けることで、免停や取消を一時的に免れることが可能ですが、それでも現在の免許の有効期限が切れるまでしか運転することができないため、運転者は嫌でも処分を受入れなければならない (受入れない場合は免許証が期限切れで失効する) ということになり、これはセキュリティホールではありません。


なお、「道路交通法の違反行為・反則行為を行った後に警察からの呼び出しに応じなければ逮捕されるのではないか?」と疑問をお持ちの方も多いと思います。確かに、交通違反をした後の警察の捜査上の呼び出しに応じなければ逮捕される場合があります。しかし、交通反則行為について、交通反則告知書・通告書を受取ってから 7 日または 10 日以内に、違反を認めて反則金を支払った場合は、それで事件は終結し、それ以降逮捕される恐れはなくなります。また、重大な違反 (交通反則行為にならない違反。大幅なスピード違反など) を行った場合も、警察からの呼び出しがあれば素直に応じ、違反事実を認めて交通裁判所で略式裁判を受ければ逮捕される恐れはありません。このように、警察からの出頭要請には素直に従い、違反は素直に認め、反則金については素直に納付していれば、たとえ公安委員会からの出頭要請があってそれを無視していても逮捕されることはありません。(警察による捜査行為と、公安委員会による免許停止等の行政処分の行為は、全く別の処理です。前者は出頭要請を無視すると逮捕されることがあります。後者は出頭要請を無視しても逮捕されることは絶対にありません。)




上記のようなことを考えると、運転者は以下のような工夫をすることができます。

  1. 免許の残り期間が短い状態で、免停や取消の対象となる違反をしてしまったら、翌日などすぐに運転免許センターへ行き、別の種類の簡単な免許 (たとえば大型特殊自動車など) を受ける。そうすると、免許証はそこからさらに最大 5 年延長されるため、5 年間の間は、その後の公安委員会からの処分通知を無視し続ければ、適法に運転することができる (無免許運転にはならない)。ただし、最大で 5 年間しか保たないことに注意すること。しかし、たとえばあと 1 年で免許証の更新があるという場合は、出頭要請を無視し続けることができる期間は 1 年間しかないということなるから、多少コストがかかっても、5 年間の新しい免許を取得するのが良い。
  2. または、免許の残り期間が短い状態で、免停や取消の対象となる違反をしてしまったら、翌日などすぐに運転免許センターや警察署へ行き、長期間の海外旅行などの用事を説明し、期限前更新を受けることで、その日からすぐに免許を最大 5 年間延長できる。長期間の海外旅行などの用事は、免許を延長しようと思った時点では予定があっても、免許を延長した後にやっぱりキャンセルしようと思うことによってキャンセルできるが、その場合でも一度更新した免許の延長が取消されることはない。
  3. 免許停止処分には停止期間が、取消処分には欠格期間が設定されている。これらの期間は日本では運転をすることはできないが、たとえば長期間海外へ行く用事がある人は、その海外へ行く用事の少し前に公安委員会に出頭して免許停止・取消処分を受ければ、その日から期間が開始される。そして、その後に海外へ行けば、海外に行っている間はいずれにせよ国内では運転する機会はないから、免許が停止されているか、取消による欠格期間があることは不利益にはならない。そのため、できるだけ、停止期間や欠格期間が海外旅行などの絶対に日本で車を運転する機会がない期間と重なるように、行政処分の開始日を調整することができる。


しかし、上記のような工夫を最大限行うことで公安委員会による出頭要請を無視し続けても、結局は現在の免許の有効期限が満了する日までしか運転することはできません。


したがって、免許停止や取消の処分通知を無視し続けることによって車をしばらくの間運転し続けることができることは、特別に問題があるのセキュリティホールではないと思います。

前提知識 その 2: 外国免許による運転

上で述べた話とは全く別の話として、外国免許に関する話を書きたいと思います。
ジュネーブ条約に加盟している国 (警察庁の Web サイト)の政府が発行した免許証と、その免許証の国際免許証の 2 つを所持している人は、日本で運転することができます。
これは、たとえば日本人が日本の免許を取得していないが、外国で免許を取得し、それを日本に持ち帰って運転する場合にも適用されます。したがって、日本よりも簡単に免許が取得することができる国 (フィリピンなど) で免許を取得し、フィリピンで国際免許証も発行してもらい、それを日本に持参すれば、日本で適法に運転できます。
日本人でも日本の面倒な教習場へ行かなくとも、フィリピン等に旅行し、そこで容易に運転免許を発行してもらえば、日本で運転できることになっています。


ただし、運転できる期間は、その人が日本に上陸 (入国または帰国) した日から 1 年間とされています (第 107 条の 2)。これは日本人でも外国人でも同じです。(当然、外国免許の有効期限が有効な間に限られます。)


この制度は昔からありましたが、この制度を積極的に活用して、日本人であってもフィリピン等の免許を取得しておき、1 年に 1 回は必ず外国に定期的に旅行し、短時間 (1 日など) で帰国すれば、永久に日本においてフィリピン免許で運転ができるということになってしまいます。このような積極的な活用をする人が増えたため、日本では 2002 年から道路交通法が改正され、以下のような規定が追加されました。

日本に上陸した際に、住民基本台帳に記録されている者が出国し、出国の日から 3 ヶ月未満の期間内に帰国した場合における当該上陸は、上陸とは数えない。(第 107 条の 2 の括弧書き)


つまり、2002 年の法改正によって、日本の住民基本台帳に記録されている日本人がフィリピン免許などを用いて日本で運転をすることができる期間は、少なくとも 3 ヶ月以上外国に行っていた間に限られてしまうことになりました。
これを表したのが以下の図です。日本人がこの制度を活用する場合は、出国してから帰国するまで、3 ヶ月間は海外に滞在しなければなりません。海外というのは、どこか 1 カ国という意味ではなく、複数カ国でも構いません。



この道路交通法の改正により、昔のように、日本の住民基本台帳に記録されている日本人が、フィリピン免許などを取得して、1 年間に 1 回定期的に短時間のみ外国に出国し、すぐに帰国してから 1 年間自動車を運転できる、ということはできなくなってしまいました。


しかし、上記の「外国滞在期間 3 ヶ月以上」という制約は、日本人であっても、出国の際に住民基本台帳の記録を削除した状態になっている人には適用されません。
住民基本台帳の記録 (住民票) の削除は、誰でも、市役所で海外転出届を出すことによって行うことができます。海外転出届を出す時点で、一時的に、生活の拠点を海外に移す (日本には一時的に住まなくなる) ことを予定していれば、海外転出届を出すことができます。どれくらいの間海外に滞在する場合に、海外転出届を出さなければならないか、ということは法律で決まっていません。(市町村によっては、1 年以上海外へ行く予定がない人からの転出届を受理しない場合もあるそうです。その場合は、まずは 1 年以上海外へ行くことを決心して、転出届を提出し、海外へ行ってからその決心を緩和してやっぱりすぐに帰国したいと思えば、帰国することができます。)
海外転出届を出した人が出国し、しばらくして帰国した場合は、転入届を出して住民票を復活させることができます。


こうすると、出国時にその日本人は「住民基本台帳に記録されている者」には該当しなくなり、その人が海外から 3 ヶ月以内のより短い期間で帰国したとしても、その日から 1 年間は自動車を運転することができるようになります。


図に表すと、以下のようになります。



このように、まず、海外に一時的にでも滞在することにより日本には住まなくなる予定であると思っている人は、出国前に市役所へ行き、海外転出届を出して住民基本台帳から住民票を削除してもらいます。次に海外へ行き、海外に滞在します。市町村によっては、1 年以上海外へ行く予定がない人からの転出届を受理しない場合もあるそうです。その場合は、まずは 1 年以上海外へ行くことを決心して、海外に行き、もともとは結構長い期間、海外に住もうと決意していたが、例えば海外のトイレが汚いのを見て驚いたなどの理由により、到着後すぐに考えが変わり、直ちに (1 日でも早く) 日本に帰国したいと思えば、いつでも帰国できます。そうして、日本に帰国したら、その日から 1 年間は、フィリピン免許などの外国免許で日本で運転することができるようになります。
(市役所に転入届を出すことによる住民票の復活は、帰国後に早急に行っておいたほうが良いと思います。なお、海外に一時的に住む意志がないのに海外転出届を提出したり、帰国してずっと国内に住んでいるのに転入届を提出しない場合は、住民基本台帳法第 53条によって、5 万円以下の過料に処せられます。過料とは罰金ではなく、刑罰でもありません。そのため、犯罪にはならず、前科にもなりません。)


1 年以内に最低でも 1 回、海外へ行く (その際は住民票を一旦削除することを忘れない) ことにより、外国免許 (フィリピン免許など) が有効な間は、その免許によって、日本国内では無免許でも、いつまででも自動車を運転することができます。図に示すと、以下のようになります。



なお、上図において「わずかな期間 (1 日など)」海外へ滞在するために、出国前に住民票を削除し、帰国後に住民票を復活させる様子が描かれていますが、このような短期間の海外滞在のために住民票を削除するべきだと考える市町村長と、このような短期間の滞在であれば住民票の削除は行わないことにするべきだと考える市町村長の 2 種類が存在すると思います。後者の場合は、短期間の海外滞在のために転出届を提出しても、住民票を削除することはできないかも知れません。また、すぐに帰国するつもりであるのに長時間帰国しないつもりだと嘘の申立てをして海外提出届を出して自分の住民票を削除させることは、公正証書原本不実記載罪に当たる可能性があるのではないか、という指摘がありました。そこで、次のような方法でさらに工夫することにより、公正証書原本不実記載罪とされずに自分の住民票を削除した状態にして継続することができるのではないかと思います。まず、第 1 回目の出国の際には、本当に長期間滞在するつもりで外国に出国し、ある程度の期間は確かに外国に居住します。この際、出国前に市町村において海外転出届を提出します。これは適切な届出ですので、公正証書原本不実記載罪にはならないと思います。次にしばらくして帰国し日本に住むことを再開した後に、市役所への転入届を怠ります。市役所への転入届を怠ることは、虚偽の届出を行うこととは異なり、公正証書原本不実記載罪には該当しないと思います。市役所への転入届の提出をすべきなのにあえてしないことは、住民基本台帳法で定められている刑罰付きの罰則にも該当しないと思います (届出を怠ることは 5 万円以下の過料のみ。市役所への転入届の提出を怠ったことによって本来課税されるべき住民税が課税されなくなり税法上の問題があるのではないかという指摘があるかも知れませんが、住民税については非課税の対象となってしまったことを知った後に自主的に申告納付することにより脱税になる心配もないと思います。)。この状態が継続している間は、その人は、それ以降の出国・帰国の際は海外滞在期間が 90 日以内でも、道路交通法第 107 条の 2 の除外規定に該当しないため、公正証書原本不実記載罪に該当する犯罪を行うことなく、適法に外国免許証で運転し続けることができるのではないかと思います。


ここまで書いた話は、運転免許制度について詳しい人や警察の職員などの専門家であれば知っている話であり、特にセキュリティホールのようなものであるという訳ではありません。
ここからが本題になります。

セキュリティホール 1: 外国免許を用いて運転する人は公安委員会による停止処分を無視できる

さて、ここまで説明した、免許停止・取消に関する行政処分の話と、外国免許を用いて日本で運転することができる話の 2 つを組み合わせて考えながら、さらに詳しく道路交通法を読むこと、興味深いことに気付きます。


外国免許を持っている人は、日本では条件を満たせば運転できます (前述の方法により事実上、無期限に運転できます)。外国免許は外国政府が発行する免許ですので、日本の行政機関は、外国の免許を停止したり、免許取消をしたりすることは絶対にできません。日本の行政機関が、その外国免許を発行した外国政府に対して、免許を停止するべきだと連絡としたとしても、その外国政府が日本の行政の言うことに従うはずはありません。


そうすると、外国免許を持っている人は日本ではたくさんの違反を重ねても免許停止にはならないのではないか、というアイデアが誰でも自然に出てくるのではないかと思います。それはその通りで、日本の公安委員会は、外国免許の停止や取消をすることはできませんが、代わりに、道路交通法第 107 条の 5 に従い、日本国内の免許停止や取消の基準に応じた基準と期間により、その運転者の運転を禁止することができます。


たとえば、日本人がフィリピン免許で日本で運転していて、合計 10 点の点数が付いた場合は、公安委員会は、60 日間の運転禁止処分を行うことができます。(日本の免許の場合は 10 点の累積で 60 日間の免許停止処分になるので、これに準じた期間が、外国免許によって運転しようとする人に対しても課されます。)


これにより、外国免許で運転する人に対しても、普通の免停や免許取消と同じように、違反が重なった場合は運転を禁止することができるので、大安心であるとひとまず考えることができそうですが、実は道路交通法をよく読むと、ここに大きなセキュリティホールがあるということがわかります。


外国免許で運転しようとする人に対して運転を禁止することは、国民の権利を制限する行政処分です。行政処分をする基準に達した人に対して、行政処分をするかしないかは、公安委員会が自由な裁量で決めることができます。つまり、点数は行政処分が可能な程度に十分な数値に達したが、行政処分がされない場合もあります。この点は、前述の国内における運転免許に対する行政処分の場合と同じです。


そのため、外国免許で運転しようとする運転者は、現場の警察官から違反点数を告知され、その合計が 6 点以上になったとしても、その時点で公安委員会による処分が行われた訳でも、処分されることに決まった訳でもないため、それ以降も問題なく自動車を運転することができます。この点も、前述の国内における運転免許に対する行政処分の場合と同じです。


さらに、ここでかなり核心に近づいてきたのですが、公安委員会は、外国免許で運転をしようとする人に対して、運転禁止の行政処分を行う場合には、必ず、第 107 条の 5 第 11 項および第 104 条の 3 の手続きに従って、運転禁止の内容及び理由を記載した書面を運転者に交付しなければなりません。そして、運転者がこの通知書を受取った瞬間から、記載されている期間の間、日本における運転が禁止されます。この点も、前述の国内における運転免許に対する行政処分の場合と同じです。
ここで最も重要なことは、たとえ、公安委員会が、外国免許による運転者に対して運転の禁止処分を執行したいと思った場合でも、その運転者に対して、確実に、禁止処分の通知書を交付しなければ、処分を執行することができないという点です。
国内免許のところで解説したように、公安委員会が運転者に対して行政処分の通知書を交付するまでは、行政処分 (運転できない期間) は開始されていないことになり、処分の執行および通知書の交付のための出頭要請を無視し続けている限りは、処分を執行することができません。(運転者が出頭に応じ、処分の告知と通知書の交付を受けない限り、その運転者は、自分が行政処分の対象となったことを確実に知ることが不可能なため、このようになっています。)


前述のように、日本の免許証の場合、免停や取消の処分通知書の交付のための出頭要請を無視し続けるという戦略の場合は、次回の免許更新の際に出頭した際に処分が執行されてしまうという問題があるため、この作戦で、永久に処分を受けずに日本で運転することはできないということになっています。


しかし、外国免許によって運転をしようとする人においては、運転禁止の処分通知書の交付のための出頭要請を無視し続けるという戦略を採ることにより、その人はいつまで経っても運転禁止の処分通知を受けることがなく、よって、運転禁止とはならないため、いつまででも運転することができます。

もちろん、そのような人であっても、前述のとおり、最低でも 1 年間に 1 回は海外に出国しなければなりません (外国免許の有効期限は日本に上陸してから 1 年間です)。しかし、海外から帰国したら、また 1 年間運転できます。


これを繰り返すことによって、日本人は誰でも、フィリピン免許などの外国免許 (と国際免許証) を 1 つ持っていれば、日本で何度も違反をしても、公安委員会からの運転禁止処分の執行のための出頭要請を無視し続ければ、運転禁止処分が課されることがなく、永久に運転し続けることができてしまいます。前述の日本における免許の話と同じように、運転者は、公安委員会からの出頭要請を無視することができ、これは警察による捜査に応じないこととは異なりますので、応じないからといって逮捕されることもありません。出頭要請に応じて出頭してしまうと、行政処分の通知書を交付されてしまい、行政処分があったことを知ってしまうことになり、知ってしまった瞬間から運転の禁止の効力が発生するので、出頭することで運転者の利益になることは何一つありません。出頭しない場合は、行政処分の通知書を交付されることがなく、行政処分の発生を知ることができないため、運転の禁止の効力は発生せず、運転者にとっては利益になります。そういう状況で、喜んで出頭する人がいるはずがありません。


このセキュリティホールを活用する人の様子を図示すると、以下のようになります。



上図における、海外滞在期間前後の住民票の削除と復活が可能かどうかという議論は、前述の「前提知識 その 2」で述べていますので、そこを参照してください。


ところで、警察官が、公安委員会による行政処分の通知書の交付のための出頭要請に応じない人を発見した場合 (たとえば検問や、新たな違反行為に関する検挙の際など)、第 104 条の 3 第 2 項により、警察官は、改めて日時を指定して公安委員会に出頭するよう命令することができることになっています。この命令に従わずに、指定された日時に出頭しなくても、罰則はありません。罰則がないということは、従わなくても不利益はないということになります。


なお、第 104 条の 3 第 3 項によれば、警察官は運転者に対して公安委員会への出頭命令を出す場合は、免許証を預かることができるとされています。警察官はその預かった免許証を公安委員会に送付しなければなりません。これは、外国免許によって運転する人の場合、外国免許と国際免許証にも適用されます。この場合、第 107 条の 5 第 11 項の規定により、その人が外国に出国しようとするときは、公安委員会は直ちにその人に対して外国免許と国際免許証を返還しなければなりません。これは便利ですが、この際に公安委員会へ出頭すると、処分書を交付されてしまう危険があります。そこで、あえて返還を請求しないほうが安全かも知れません。
その場合は、その外国免許証を発行した外国政府 (フィリピンなど) のところへ行き、「貴国が発行した私の免許証を、別の政府 (日本国) が不本意にも没収したので、再発行して欲しい。」と述べ、その外国政府から新たに免許証と国際免許証を発行してもらえば良いということになります。そして、その免許証などを日本に再度持ってこれば、問題なく運転を再開することができます。
(もっとも、警察官によって外国免許が預かられてしまい手元にない状態であっても、日本国内で運転することができる資格には影響がないため、外国免許の再発行を受けずに、手元に免許がない状態で運転をしたとしても、無免許運転にはならないのではないかと思いました。書籍『執務資料 道路交通法解説』によると、外国免許は日本に持ってきてさえいれば、その免許が手元になくても免許を所持しているものとされ、運転しても良いと書かれています。ただし、摘発されると、免許不携帯の反則金が課せられる可能性があります。しかし、免許不携帯には違反点数は付きません。この括弧書きの部分については、『外国免許・国際免許は単に発給を受けただけでなく所持していなければならず、「所持」の一般的解釈は「事実上支配している状態」なので、自宅や会社等に保管している場合は単なる不携帯で済みますが、国内に持ち込んだ後に遺失したような場合は「所持」とは言えず無免許となります。』という意見が寄せられましたので、警察官によって外国免許が預かられてしまい手元にない状態になった場合はそれ以降外国政府によって免許証を再発行してもらうまで運転できない可能性もあります。)

セキュリティホール 2: 日本の免許で免停や免許取消になりそうになってからでも外国免許を取得すれば運転できる

前に述べたように、日本の免許について、公安委員会によって免許停止または免許取消の対象とされた人についても、その人が処分執行のための通知書の交付のための出頭命令を無視した場合は、日本の免許が切れるまでの間、その人は自動車を運転し続けることができます。


このような人は、日本の免許が切れる前までに、日本の免許からその国の免許に簡単に切替えることができる免許制度がいいかげんな国 (フィリピンなど) へ行き、日本の免許証とその翻訳文を提示して、フィリピン免許と国際免許証を取得することができます。そして、その人はフィリピン免許と国際免許証を日本へ持ち込み、自動車を運転することができます。


日本の免許と外国免許の 2 種類を持っていても、日本の免許が停止中、または取消されていて欠格期間の間は、外国免許を持っているからといって、日本で車を運転することはできません (第 107 条の 2 の除外規定)。また、外国免許しか持っていない期間に運転して運転の禁止の処分を受けた人の場合、その禁止期間が満了するまでは、日本の免許を新たに取得することができません (第 88 条の 4)。これは日本の免許が免停になったから外国の免許で運転するとか、外国の免許で運転禁止になったから日本の免許を取得するというようなセキュリティホールを突く活用をできないようにするための規定です。


しかし、日本の免許について免停または取消の処分通知を受けるまでの間は、日本の免許で運転できますし、その日本の免許が有効期限切れで失効した場合は、結局その人は免許の処分を受けなかったということになるため、その期限切れの失効の後でも外国免許を持ち込めばそれで運転できます。
そして、外国免許を持ち込んで運転することができる期間は、その外国免許を更新し続け、かつ、1 年に 1 回、忘れずに海外に出る (その際は出国時点において海外転出届を出し、住民票を削除しておく) ことにより、事実上、無期限に延長することができます。海外の外国免許を更新する際のポリシーはその国の法令によりますが、日本における違反事実が外国免許の更新の際に問題になることはありません。

このセキュリティホールを活用する例

日本において、運転免許が一時的にでも停止処分されてしまうことによって、職を失ってしまうことになる方は多いと思います。そこで、上記に書いたことが正しいとすると、宅配会社の人やトラック運転手や、会社の社長などの車の運転手など、第一種運転免許で十分な人などは、もし、日本国内で免許停止の基準に該当するような点数になってしまった場合は、次のようにすれば良いと思われます。

  1. 点数が基準を超えた後、しばらくして郵送で届く、公安委員会からの「行政処分をするための処分通知書を交付するので出頭してください。」という要請は無視します (無視することに罰則はありません)。
  2. 現在の免許証は、処分通知書の交付を受けるまでは有効ですので、処分通知書の交付のための出頭要請を無視し続ければ、継続して自動車を運転することはできます。ただし、免許証の有効期限以降は免許は失効するため、運転できません。
  3. その日本の免許証が有効な間に、フィリピンなどの、免許制度がいいかげんな国の免許 (日本の免許証を提示すれば、すぐにその国の免許証がもらえる) を取得し、国際免許証も取得します。
  4. 日本の免許証の有効期限が切れてしまった後でも、外国免許を日本国内に所持していれば、問題なく運転できます。
  5. 最低 1 年間に 1 回、市役所に海外転出届を出して住民票を削除してから外国へ旅行し、帰国することを忘れないようにしなければなりません。(外国免許の有効期間は最後に帰国してから 1 年間です)。この際は、市役所に対して虚偽の申し出をしてはなりません。
  6. 外国免許および国際免許証はその国の法令に従って、定期的に更新しなければなりません。
  7. 外国免許を用いて運転中に行った交通違反が原因で、公安委員会から、「運転の禁止処分を執行するための処分通知書を交付するので出頭してください。」という要請が来ても無視します (無視することに罰則はありません)。
  8. 公安委員会が処分通知書を交付したいと考えているが、交付ができない人については、警察官が、出頭を命令し、同時に外国免許証を預かってしまう可能性があります。この場合は、その外国免許証を発行している外国政府に再発行してもらえば、また日本でそれを携帯して運転できます。
  9. 上記のことを続ければ、日本で、一般的な交通違反を何度繰り返したとしても、公安委員会は、外国免許に対して運転禁止の行政処分を行うことも、また、以前に保有していた国内免許に関する免停や免許取消の行政処分を行うこともできないため、永久に運転できてしまいます。


再掲になりますが、「道路交通法の違反行為・反則行為を行った後に警察からの呼び出しに応じなければ逮捕されるのではないか?」と疑問をお持ちの方も多いと思います。確かに、交通違反をした後の警察の捜査上の呼び出しに応じなければ逮捕される場合があります。しかし、交通反則行為について、交通反則告知書・通告書を受取ってから 7 日または 10 日以内に、違反を認めて反則金を支払った場合は、それで事件は終結し、それ以降逮捕される恐れはなくなります。また、重大な違反 (交通反則行為にならない違反。大幅なスピード違反など) を行った場合も、警察からの呼び出しがあれば素直に応じ、違反事実を認めて交通裁判所で略式裁判を受ければ逮捕される恐れはありません。このように、警察からの出頭要請には素直に従い、違反は素直に認め、反則金については素直に納付していれば、たとえ公安委員会からの出頭要請があってそれを無視していても逮捕されることはありません。(警察による捜査行為と、公安委員会による免許停止等の行政処分の行為は、全く別の処理です。前者は出頭要請を無視すると逮捕されることがあります。後者は出頭要請を無視しても逮捕されることは絶対にありません。)



警告と免責: ここで記載する内容は個人的に研究をした結果に基づいているもので、有効性については一切保証されていません。ここで記載している内容を参考にしたことによって損害が発生しても、著者は一切責任を負いません。著者がここで記述している内容はあくまでも思考実験の過程によるものであり、運転者に対して法令違反行為をするように唆しているものではありません。ここに掲載した記事の趣旨は、論理的にはここに記載されているようなことが可能なのではないかという推論に基づくものであり、そしてそのようなことが可能であれば一種の不具合であると言うことができるので早急に不具合を修正しなければならないという問題提起を目的としたものであります。道路交通法以外の法令についても検証不足の点がある可能性があります。以下の行為を実際に実行することを勧めるものではありません。もし、実施される場合は、それぞれの行為が刑事罰の対象にならないかどうか十分注意してから、刑事罰の対象とならない行為のみを行ってください。


このセキュリティホールを塞ぐ方法

たとえば、

外国免許を用いて運転する人に対して公安委員会が運転禁止の行政処分の執行のための処分通知書を交付することができなかった場合において、それ以降に警察官がその人に対して日時を指定して公安委員会に出頭するよう命令をしたとき以降に、その人が日本に再度上陸した場合は、たとえ外国免許を所持していたとしても、あらかじめ公安委員会に対して出頭した後でなければ、その外国免許を行使して日本国内で自動車を運転してはならない。

という規定のパッチを道路交通法に当てれば、このセキュリティホールを塞ぐことができるのではないかと思います。

Q&A 集

よくある質問と回答集 11/28 追加

  • Q. なぜ「セキュリティホール」なのか?
    A. 一般的にセキュリティホールとは、コンピュータのプログラムに外部からの通信などにより想定しない入力データが入った場合に、プログラムが本来果たしている、安全を保つための機能が動作しなくなる可能性がある欠陥のことを意味します。法律や政令はプログラムのように明確に書かれなければならず、国民の権利を制限する強制力がある行政機関は、国民の権利を侵害しないようにするため、法令を基にロボットのように正確に動作しなければなりません。そうすると、行政機関はコンピュータ、法令はプログラムであるように見えてくることがあります。そこで、道路交通法というプログラムの安全維持機能 (交通ルールに頻繁に違反する危険な運転者を道路から排除する機能) がある一定条件で麻痺してしまうことを指して、「セキュリティホール」と呼ぶことにしました。

  • Q. 公安委員会からの行政処分通知書交付のための呼び出しに応じなければ逮捕されるのではないか?
    A. 公安委員会は捜査機関ではないので、公安委員会からの呼び出しに応じないことで逮捕されることはありません。

  • Q. この仕組みを活用しようとしている運転者について、軽微な交通違反をした際に警察が運転者を逮捕することができ、運転者が逮捕されている間に、公安委員会の人が留置所にいる運転者のところへ行き、立会人を設けて行政処分通知書を交付することができるから、それで安全が維持されるのではないか?
    A. 飲酒運転などの交通違反の場合はそのようにすることができるので安全だと思います。ただし、警察によって逮捕されている者が留置所にいる場合に、部外者である公安委員会の人が留置所に入って逮捕者と会うことが合法的に可能なのかは怪しいところです。また、運転者が行ったのが軽微な交通違反であり、反則制度の対象となる場合は、警察官は速やかに告知を行う (第 126 条) 義務があります。告知を受けた人は、7 日以内に反則金を納付することができます。この反則制度で違反を認めて反則金を支払う運転者は、公訴を提起されない (第 130 条) ことになっています。警察は、違反を認めて反則金を支払う運転者を逮捕することができません (告知書の受領を拒否した場合を除く)。よく、警察が悪質な違反者を逮捕したという報道がありますが、これは、反則行為に対する告知や通告を無視して反則金を納付せず、さらに捜査のための出頭要請にも応じない人を逮捕したという話です。公安委員会からの呼び出しには応じなくても、反則行為に対する告知には応じて違反を認め、反則金を納付することは可能です。そのような状態の場合は、運転者が逮捕されることはありませんので、公安委員会の人が運転者に対して強制的に行政処分通知書を交付する機会がないという危険が残ります。

  • Q. 公安委員会の人が行政処分通知書の交付のための出頭要請を無視する運転者に対して、代わりに立会人 1 人と共にその運転者の自宅へ赴き、行政処分通知書を手渡すことができるのではないか?
    A. そのようなことが行われたという実例は聞いたことがありませんが、それは確かに可能なのではないかと思います。ただ、たとえばこれは自宅前に新聞の定期購読の契約を迫る新聞配達所の営業の人が訪問販売を行うのを無視するのと同じように、門前払いをして無視することが可能です。公安委員会の人は、宅内の人が行政処分通知書の受領に応じない場合に、勝手に宅内に入り行政処分通知書を押しつけることはできないため、やはり公安委員会の人が運転者に対して強制的に行政処分通知書を交付する機会がないという危険が残ります。

  • Q. ここで指摘されている方法を活用して免許停止などを免れたとしても、素直に取消処分を受けたほうのコストが、外国免許を取得・維持するために外国へ行くコストよりも安価だから、意味がないのではないか?
    A. 免許停止の場合はそのとおりですが、免許取消となってしまう人の場合は欠格期間が数年あり、その間は日本では絶対に運転することができなくなってしまいます。そうすると職業に差し支えがある人の場合は、免許取消を免れるために、ここで指摘されている方法を活用したほうが損失が少なくなる場合も多いと思いますので、ここでの指摘はやはり意味があるものと思います。

  • Q. それでも、このような面倒なことを行う運転者は普通はいないだろうから、指摘する意味がないのではないか?
    A. そもそも、これは、法令をコンピュータのプログラム、行政機関をコンピュータのハードウェアとして見立てた思考実験であり、実用性を求めたものではありません。しかし、一応実用にはなるのではないかと考えたので、活用例を挙げて指摘しています。

  • Q. 法律はプログラムではないし、行政機関はコンピュータではない。法律に書いていないことを行政機関が行うことができる。
    A. それは大変な危険思想だと思います。いやしくも行政機関がコンピュータのような厳格さの維持を怠って、法律通りではない動作をすることを許すことは、その行政機関が国民の意図していない動作を突然行う危険がある状態ということになってしまい、我々国民にとって大変な不利益になります。プログラムのほうにバグがあるのに、それを修正するのが面倒なので放置し、CPU の側で対処療法的に対応すると、いつのまにか、例外処理だらけの CPU の回路やマイクロコードを含むようになってしまい、その CPU は安心して使用することができなくなってしまいます。

  • Q. なぜこのような特異なケースで法令の執行がおかしくなることをわざわざ指摘するのか?
    A. 法令に不具合があり、特定の入力を行うと機能が麻痺してしまう問題は、それぞれの問題は一見大した影響はないように見えることがありますが、複数の法令にこのような欠陥が含まれている場合、それらを結合して活用すると、大変な影響があることを適法に行うことができてしまうという現象が発生する場合があります。そのような現象が発生しないように、プログラムや法令をメンテナンスする際には細かな欠陥を埋めていく作業を行う必要があります。法令に意図していない欠陥がある場合、それを修復しようとすることは、多くの国民の利益につながります。

  • Q. この記事の著者は免許の処分を受けたので憤慨してストレス解消のためこのような記事を指摘したのではないか?
    A. 著者は免許の停止処分も取消処分も受けたことがないので、これは純粋な思考実験です。

  • Q. そもそもなぜこのような不具合を発見しようとするのか?
    A. これはソフトウェア技術者の職業病です。特にこの職業病が深刻なソフトウェア技術者の場合、プログラムを一生懸命眺めなくても、ぼうっと全体的に俯瞰すれば、脆弱な部分を発見してしまうことが多いです。さらに、この職業病が深刻になったソフトウェア技術者の場合、コンピュータのプログラム以外、たとえば社会的なルールなどについても、積極的に発見しようとするのではなく、なんとなく眺めているだけで、自動的に脆弱な部分がある程度わかってしまうことになります。本当かどうかは、知人に重度なソフトウェア技術者の方がいれば、その方に聞いてみてばわかります。